神経内科とはabout
神経内科は、中枢神経系(脳と脊髄)と末梢神経系、および筋肉の障害によって起こる様々な病気を内科的に治療する診療科です。主に体を動かす、何かを感じる、考えたり・覚えたりするといったことが上手くできない、あるいは困難が伴うといった場合に神経内科に関連する病気が疑われます。
なお、精神科や精神神経科、神経科、心療内科などと混同されがちですが、これらの科は精神的な問題を扱う科で、神経内科は精神疾患を扱う診療科ではありません。脳や脊髄、神経、筋肉に病気があり、体が不自由になる病気を扱います。
対象とする主な症状
- うまく力が入らない(脱力)
- 手足や体が勝手に動いてしまう(不随意運動)
- しびれ
- めまい
- ふるえ
- 歩きにくい
- ふらつく
- ひきつけ
- むせる
- 習慣的な頭痛
- 著しいもの忘れ
- ものが二重に見える(複視)
- 言葉が話しにくい
- 意識障害
神経内科でよく取り扱う疾患major desease
脳梗塞
脳梗塞は、脳の血管が詰まったり、狭まったりするなど血流が悪くなることで起きる疾患です。なお、その詰まり方については、主に2つのタイプに分けられます。
ひとつは、動脈硬化を起こして血管が狭くなり、やがて詰まっていく脳血栓症です。この脳血栓症には、首や脳の比較的太い動脈で起きるアテローム血栓性脳梗塞、脳の細い血管が詰まることで起きるラクナ梗塞に分類されます。
もうひとつが、心臓などでできた血の塊(血栓)が流れてきて脳の血管を塞いでしまう脳塞栓症です。このほかにも、一時的に脳の血管は詰まりますが、すぐに血流が再開するという脳梗塞の前触れとして起きる一過性脳虚血発作もあります。
なお症状については、いずれのタイプも同じで舌が麻痺して呂律がまわらない、体の片側の手足が麻痺する、しびれがなどです。脳梗塞を診断する方法には、頭部MRI、CTなどを用いて診断するほか、心電図や血液検査も行います。
治療法ですが、脳梗塞を発症してから4~5時間以内であれば血栓を溶解する薬を用います。また、発症後時間が経過してしまったり、血栓を溶解する薬の効果が認められないと判断した場合は、手術やカテーテルを用いた血栓除去などが行われることがあります。このほか後遺症を抑えるために治療の早い時期からリハビリテーションも行います。
脳出血
脳出血とは、脳の中にある細かい血管が破れて出血している状態です。高血圧の患者様に多く、高血圧で動脈硬化を進行させたことで血管が脆くなったところへ、さらに血流の圧力がかかることで血管は膨れ、そして破れてしまうことで脳の内部に出血が起きてしまいます。
主な症状には、頭痛、めまい、吐き気や嘔吐、片方の手足の麻痺やしびれ、しゃべりづらさ、歩行しづらいなどがあります。診断では、頭部CTなどを用いて出血している場所は出血の量などを確認します。
治療に関してですが、命を失う危険のある場合は手術を行うこともありますが、多くの場合は薬物療法とリハビリになります。薬物治療では、降圧薬や出血で腫れた脳のむくみを取る薬を処方します。リハビリでは、しびれや麻痺などにより動かしづらくなった手足やしゃべりづらさを解消することを目的に行います。このほか、高血圧の治療も行います。
頭痛
頭痛には、大きく一次性頭痛と二次性頭痛に分類され、この2つの違いは「命に係わらない頭痛」(一次性)と「命に係わる頭痛」(二次性)です。頭痛に関しては、まず命に係るものかどうかを診断する必要があります。診断では詳細な問診などを行い、二次性頭痛が疑われるなど、必要であればCTなどを用いる検査も行います。主な一次性頭痛、二次性頭痛は以下の通りです。検査の結果、二次性頭痛と診断されたら、その原因である病気の治療が優先されます。
一次性頭痛 | 片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛 など |
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二次性頭痛 | 脳出血、くも膜下出血、脳腫瘍、髄膜炎、高血圧、顎関節症、心身症、薬物乱用頭痛 など |
一次性頭痛について
一次性頭痛は、頭痛の症状そのものが原因で起きる疾患で、片頭痛、緊張型頭痛、群発頭痛などがあります。
片頭痛
片方あるいは両側の頭にズキズキとした痛みが人によって週に1度だったり、月に1、2回ほどの頻度でみられ、痛みが一度生じると数時間~3日ほど続きます。また頭痛が起きる前には、視野の一部が見えにくくなったり、目の前にフラッシュのような光が瞬いたりするなどの前兆がみられることもあります。また症状を訴える方に女性が多く見受けられるのも特徴です。
原因としては、血管を収縮する作用があるとされるセロトニンという物質の過剰放出が考えられています。治療は薬物療法で、トリプタン系製剤やエルゴタミン製剤が用いられています。
緊張型頭痛
頭や首の筋肉が緊張、収縮することで起こる頭痛を緊張型頭痛と言います。これは長時間同じ姿勢を続けていることによる血行障害(肩こりや首のこりなど)や日頃のストレス、眼精疲労などで起きると考えられています。
症状としては、頭が締め付けられるような痛み、痛みを首から後頭部にかけて感じるといったことがあります。また、人によっては、めまいや立ち眩みが生じます。なお一度痛みが出ると数時間~数日間ほど続きます。
治療につきましては、痛みに対する対症療法となります。薬物療法としては、鎮痛剤は抗うつ剤などが使用されます。そのほかにもマッサージやヨガ、鍼・灸、漢方薬などを使用することがあります。
群発頭痛
群発頭痛は、片側の目の窪みの部分からこめかみにかけて、まるでえぐられるような耐え難いほどの痛みが目に現れるほか、目の充血や涙、鼻水などを伴うこともあります。
このような症状がみられるのは、頭部の血管拡張によるものではないかと考えられています。とくにアルコールやタバコなどが誘発要因とされ、男性の患者様が多いのも特徴です。一度頭痛が起きるとその症状は1~2ヵ月ほど続きます。なお、頭痛は1回起きると数十分~数時間程度続きます。
治療では、薬物療法としてトリプタン系製剤やエルゴタミン製剤を使用します。そのほか純酸素吸入法なども用いられます。
神経難病
神経難病とは、神経の病気のなかでも原因がよくわからない疾患や治療法が存在していないものを総称した呼び方です。この神経難病に指定されている病気には、運動ニューロン病(筋萎縮性側索硬化症、脊髄性筋萎縮症など)、脊髄小脳変性症(脊髄小脳萎縮症、他系統萎縮症など)、多発性硬化症、重症筋無力症、パーキンソン病、進行性核上性麻痺といったものがあります。
ただ原因がわからないと言っても、ある程度は判明しているものや、根本的に治すことは難しくても、治療によっては日常生活を送れるようになるタイプもあります。つまり神経難病には、治療が有効なものと、効きにくいものとがあるのです。なお直接的な治療法が見つからない場合でも、医療がかかわることで少しでも生活しやすくすることは可能です。
認知症
認知症は、老化に伴う病気の一つです。様々な原因で脳細胞が死んだり、働きが悪くなったりすることによって、記憶・判断力の障害などが起こり、社会生活や対人関係に支障が出てくる状態(およそ6ヵ月以上継続)を言います。
日本では、高齢化の進展とともに、認知症の患者数も急増しています。65歳以上の高齢者では、7人に1人くらいが何らかの認知症を患うと見られています。
なお認知症は単一の疾患ではなく、いくつかのタイプに分類されます。主なタイプは以下の通りです。ちなみに全認知症患者の約9割はアルツハイマー型認知症と脳血管型認知症の2大疾患で占められています。
アルツハイマー型認知症 | 全認知症患者の60~70%の方がアルツハイマー型で、特徴としては最近の出来事を忘れる、女性の患者様が多いといったことがあります。内服の薬物療法を早期に行えば進行を遅らせることができます。 |
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脳血管性認知症 | 脳卒中(脳梗塞、脳出血、くも膜下出血)など、主に脳の病気に起因する認知症です。全認知症患者の約20%を占めていると言われています。 |
レビー小体型認知症 | 幻覚、幻視、妄想の症状がよく見られ、男性患者が多いと言われています。 |
前頭側頭型認知症 | 前頭葉や側頭葉が萎縮することで起きる認知症です。人格が変わったり、反社会的行動が全面に出てくるようになります。難病指定疾患です。 |
若年性認知症 | 65歳未満の人が発症する認知症のことを言います。割合としては、脳血管性認知症の患者様が多いです。 |
正常圧水頭症 | 脳室が拡大することで引き起こされる認知症です。手術による改善が見込めます。 |
慢性硬膜下血種 | 頭をぶつけて約1~2か月後に発症します。脳と硬膜の間にゆっくり血液が溜まっていくことで、認知症様症状を引き起こします。手術による改善が見込めます。 |
認知症が完治する方法は、現在のところ確立されていませんが、症状が軽いうちに認知症であることに気づき、適切な治療を行えば、認知症の進行を遅らせたり、ケースによっては症状を改善したりすることも可能です。改善する方法としては、薬物療法と非薬物療法(回想法や認知リハビリテーションなど)があります。
てんかん
てんかんは、突然意識を失って反応が無くなったり、手足をガクガクと一定のリズムで曲げ伸ばしするなどの「てんかん発作」を繰り返し起こします。その原因や症状は人によって異なりますが、乳幼児から高齢者まで幅広く、どの年齢層でも発病する可能性があります。てんかんを診断するには、脳波とMRI検査を行い、症状の原因が何なのか、まず確認する必要があります。
てんかんの患者様は、突然、ひきつけたり、ボーっとしたり、意識がおかしくなったりします。このような発作は、脳の神経細胞が異常な電気的興奮を起こすことによって生じます。てんかん発作は、繰り返し起こるのが特徴です。そのため、1回だけの発作で、てんかんという診断が下されることはありません。
なお、てんかん発作の型は、脳の病的な電気的活動がどの場所に生じるかによって異なります。それゆえ、極めて多様な発作型が知られていますが、多くの場合、1人の患者様には1種類ないし数種類の発作型しか生じません。それは人によって、発作を起こす場所が決まっているからです。
治療では、薬物治療が主流で、発作をいかに消失させるか、あるいは意識消失を伴う発作の回数をいかに減らせるかに注力します。また、海馬硬化症や良性の脳腫瘍など、原因がはっきりしているてんかんについては、外科的治療により完治が期待できるケースもあります。